OBD2アダプターを使って車の故障診断コネクターからデータを取ることが出来るスマホアプリで普段使いでの燃費を計測しています。今回、トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)のデータを取ることが出来ましたので、以前データを取得していたハイブリッド車ではない旧型トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H24年製)の燃費と比較しました。走行距離4,000km程度の走行で、旧型トヨタヴォクシーの燃費が満タン法で約13.5km/Lだったのに対し、トヨタ ノア ハイブリッドでは18.6km/Lと、約38%燃費が良いことが分かりました。取得していたデータでどこに違いが出いているかを調べた結果、短距離、低速の走行で燃費が特に良くなっている、走行距離が長くても燃費はノア ハイブリッドの方が良い、ということが分かりました。以下、詳細です。

車両情報




スマホアプリを使ってガソリン消費量を計測

 トヨタ ノア ハイブリッドからは「Mass air flow sensor (MAF) air flow rate吸入空気量(質量流量)」が取得でした。そこで、トヨタ ヴォクシーの時と同様、

\[ ガソリン消費量(L/s) = エンジン吸入空気量(g/s) / 14.7(空燃比) / ガソリン密度(g/L) \]

の計算でガソリン消費量を算出しました(1) 。このガソリン消費量を積算し、ガソリンを給油するタイミングで前回の給油からの合計と、給油量を比較し、どれくらい差が出るのかを見ます。合わせて、車速(車のスピード)を積算することで走行距離を計算し、トリップメーターも給油のたびにリセットし、前回給油した時からの走行距離と比較します。今のところ8回給油分のデータが取れていますので、グラフにしてみます。今回は横軸にスマホアプリでのガソリン消費量をとり、実際の給油量を縦軸にしてみました。これからの詳細の検討をするのに、実際にはスマホでの計測値に補正係数をかけてガソリン消費量、燃費を出しているので、この書き方が分かりやすいかな、と思います。

結果、最小二乗法で計算すると、これまでのデータではスマホでの計測値の約3%増しすると実際の給油量と合いそうです。

図1.ガソリン給油量とスマホ計測値の関係


では、走行距離の方はどうでしょうか?こちらも横軸にスマホ計測値を、縦軸にトリップメーターで計測した前回給油からの走行距離と比較してみます。こっちの方が精度がいいですね。係数が0.993ですので、こちらは補正なしで行きましょう。どうしてもガソリン給油量は満タン法で計測してることもあり、ばらつきが出てしまいますね。

図2.走行距離の比較


以上の比較から、ガソリン消費量はスマホ計測値から3.1%補正、走行距離はスマホ計測値をそのまま使って調査をしていくことにします。

(1)スマホアプリを使って計測したトヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H.24年式)のガソリン消費量を満タン法と比較

走行ごとの燃費の分布

 スマホアプリでのガソリン消費量がそこそこの精度で取れそうと言うことが分かったので、これを使って走行ごとの燃費がどれくらいばらつくのか調べてみました。この記事を書いている時点でのe-燃費での燃費投稿ヒストグラムは最頻値が17km/Lでした。同様のヒストグラムを書いてみると、8~9km/Lが最頻値ですが、19~20km/Lにもピークがある形になりました。

図3.トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W)の燃費


横軸を同じにした時のトヨタ ヴォクシー(ZRR70W)の燃費のヒストグラムが図4のようでした。トヨタ ヴォクシー(ZRR70W)の時は 18km/L以上の燃費は殆どなかったので燃費の良い走行が増えていることが分かります。

図4.トヨタ ヴォクシー(ZRR70W)の燃費

一枚のグラフに重ねてみるとノア ハイブリッドはばらつきが大きく、重なっている部分もあることが分かります。

図5.燃費

走行距離と燃費の関係はどうか

 走行距離が短い走行の時に燃費が悪く、高速道路のようにある程度の距離を走った場合は燃費良くなる、ということが経験的にあると思いますので、トヨタ ノア ハイブリッドとトヨタ ヴォクシーの、走行距離と燃費の関係を比較してみます。走行のたびに走行距離とガソリン消費量を計測し、グラフにプロットしていきます。トヨタ ノア ハイブリッドは短距離で燃費の良い走行が多く、長距離の走行でもトヨタ ヴォクシーを上回っています。ちなみに、ノアは1,118回の走行、計約16,800km、ヴォクシーは1,641回の走行、計約18,500kmで比較しています。

図6.走行距離と燃費

短距離の時の代表として、10kmくらい走行した時のデータを比べてみます。まず、ノア ハイブリッドのある走行が約0.48Lのガソリン消費量で燃費にすると約20.7km/Lでした。その時のスピード、エンジン回転数、ガソリン消費量を走行開始からの時間でグラフにすると、図7のようでした。


図7.ノアの走行状況(約10km走行時)


一方でヴォクシーはどうか、というと、図8のようでした。


図8.ヴォクシーの走行状況(約10km走行時)


図7と8を比べると一目で中段のエンジン回転数のところが違うことが分かります。ノアはハイブリッド車なので、スピード(図7の下段)が出ている時でもエンジン回転数がゼロ、つまりエンジンが止まっていて、ガソリンを消費していない時間が一定程度あることが分かります。ヴォクシーのデータにはそういう所がなく、走行開始から終了まで、エンジン回転数がゼロになるところはありません。その分、一番上のガソリン消費量が多くなっていると思います。この走行ではヴォクシーの方は約0.97L、燃費としては約10.3km/Lの結果でした。

 次に、走行距離がそれなりに長い場合はどうでしょうか。約180km一気に走った時のデータがありましたので、同様に比べてみます。ノアは図9、ヴォクシーは図10のようになりました。

図9.ノアの走行状況(約180km走行時)

図10.ヴォクシーの走行状況(約180km走行時)

 ノア ハイブリッドにはオートクルーズコントロールがついていたので、オートクルーズコントロールを使えそうなときは使っています。100km/hで安定して走れていますね。どちらもほとんどを高速道路走行中だと思います。このとき、ノア ハイブリッドの方のガソリン消費量は11.1L、燃費では16.4km/L(満タン法とのずれを補正後)と計算されましたが、ヴォクシーの方は12.4L、燃費で14.9km/L程度と計測されているので、短距離の時ほど差がない結果になっていました。図9、10のそれぞれの中段のエンジン回転数を見ても、いくらか、ノア ハイブリッドはエンジンが止まっているようですが、短距離の時ほどエンジンの止まっている時間の差がないように見えます。これらのデータより、ハイブリッド車だからといっても、どんなときにも燃費が良い訳ではなく、燃費が良くなる条件がありそうです。

一日ごとにまとめてみる

 図6で、短距離ではノアの燃費が良い方にばらつきが大きいので、燃費が良かった後は極端に燃費が悪くて、平均取ると結局、大差ないのでは?という疑問がわくので、一日ごとや月間のガソリン消費量、燃費でまとめてみました。ヒストグラムで比較すると、特にノア ハイブリッドのばらつきが低減されピークがはっきりしてきましたし、平均的な燃費の差もあるように思えます。

図11.日ごとにまとめた場合の燃費比較

図12は横軸に一日の走行距離(日当たりの走行距離)、縦軸に日ごとの走行距離を日ごとのガソリン消費量で割った、日ごとの燃費を比較したものです。全般的にノア ハイブリッドの方が燃費がよさそうですが、更によく見ると、ノア ハイブリッドは日当たりの走行距離が50kmもあれば燃費が安定し、16~17km/Lになるのに対し、ヴォクシーは200kmまで緩やかに上昇しています。ハイブリッド車の効果で短距離の燃費が向上していると言えそうです。

図12.日当たり走行距離と燃費の比較

次に、日当たりの走行距離を走行時間で割った、一日の平均スピードを横軸にとってグラフ化すると、図13のようになりました。こちらも、ノア ハイブリッドは平均スピードが20km/hより大きくなればが燃費が安定して16~17km/Lになるのに対し、ヴォクシーは緩やかに上昇しています。ここでも、ハイブリッド車の効果で低速での燃費が向上していると言えそうです。

図13.一日の平均スピードで比較

まとめ

 トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)と、ハイブリッド車ではない旧型トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H24年製)の燃費と比較しました。走行距離4,000km程度の走行で、旧型トヨタヴォクシーの燃費が満タン法で約13.5km/Lだったのに対し、トヨタ ノア ハイブリッドでは18.6km/Lと、約38%燃費が良いことが分かりました。取得していたデータでどこに違いが出いているかを調べた結果、短距離、低速の走行で燃費が良くなっていることが分かりました。