OBD2アダプターを使って車の故障診断コネクターからデータを取ることが出来るスマホアプリでトヨタ ヴィッツ(KSP130、R.1年)製燃費を計測してみると、日当たりの走行距離を日当たりの走行時間で割った日当たりの平均スピードがある程度高いと燃費が良く、平均スピードが遅いと燃費が悪い傾向がありました(1) 。一方、トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H.24年製)の燃費計測結果から、同様に日当たりの平均スピードの影響もありますが、アクセル操作の多さによっても変わる、ということも分かりました(2)ので、ヴィッツでも同様の傾向があるか調べました。結果、横軸に”アクセル操作の多さ”、縦軸に燃費を取ったグラフを書いてみるとヴィッツにも同様の傾向があり、燃費の為にはあまりアクセルをバタバタさせずに、スムーズにスピードに乗って走るのが良さそうです。以下、詳細を説明します。


(1)トヨタ ヴィッツ(KSP130、R.1年式)の燃費は一日の走行距離と走行時間によって変わる

(2)トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H.24年式)の燃費はアクセル操作の多さによっても変わる


車両情報



計測方法

 OBD2アダプターを使って車の故障診断コネクターからデータを取ることが出来るスマホアプリで434回の走行、走行距離8036km分のデータを取りました。走行中の約1秒ごとの時系列のスピード、燃料消費量、スロットル開度と、スピードから計算した走行距離、走行時間等が取得できていますので、それらの値から計算しています。

加減速の多さと燃費の関係

 前回同様、時系列のスピードの情報から、まずは加速度を算出し、加減速の多い走行が燃費に悪いのか、調べてみます。時系列データの$i$番目の時点での加速度を$a_i$、スピードを$v_i$、時刻を$T_i$とすると、簡単に後方差分を取って以下のように計算します。

\begin{equation} a_i = \frac{v_i - v_{i-1}}{T_i  - T_{i-1}}  \end{equation}

1回の走行ごとに加減速が激しかった走行かそうでないかを表現したいのですが、単純に加速度の平均、みたいなことを考えると、加速度には正負あって加速が大きい時でも後の減速が大きいと打ち消されてしまうので二乗して平方根をとった、

\[ 加減速の多さ = \sum_{i} \sqrt{(a_i \cdot \Delta t_i)^2}  \]

というような指標を考え、この値を走行距離で割って、km当たりの値で比較してみます。横軸にこの”加減速の多さ”、縦軸に燃費を取ったグラフを書いてみると加減速が多い走行程燃費が悪い傾向がありそうです。

図1.加減速の多さと燃費の関係


 図中の燃費の悪いオレンジのデータと、そこそこ良い赤い三角、赤い三角と同程度の加速のデータの中から、さらに走行距離の近い黒四角のデータを比較してみます。まず、オレンジのデータですが、走行距離160mほどの短い走行でした。車の速度と、速度から計算した走行距離、速度から計算した車の加速度、その時のスロットル開度、エンジン回転数、燃料消費量(走行開始からの積算)の時間の経過に伴う変化をグラフにしてみます。ちょっと加減速して終了、の約8分弱の走行でした。この走行のデータから計算すると、km当たりの加減速の程度が約226、燃費が約1.8km/Lと出ました。

図2.オレンジの走行データ

一方、赤い三角のデータは走行距離4.7km、約18分の走行で、km当たりの加減速の程度が約79、燃費が約16km/Lでした。

図3.赤い三角の走行データ

比べてわかるのは、まず、やはり燃費のいい方のデータは走行距離が長かった、ということになりますね。そして、加減速を走行距離で割っているので、同じような距離が短いと加減速の多さが大きくなっている気がします。走行距離が長い方が、ある程度の速度で走っていて加減速が少ない時間も増えるので、加減速だけのデータと、加減速+緩やかな走行の比較、という意味では合っているのかもしれませんが、そこそこ同じ距離の走行で「荒い運転」と「穏やかな運転」の比較になっているかはもう少し考える余地があるのかもしれません。

 そこで、赤い三角と同程度の加速のデータの中から、さらに走行距離の近い黒四角のデータを見ました。同じような加減速でさらに燃費の悪い走行もあるのですが、それらは距離が短かったり、エンジンをかけたまま停車しているようなデータが多かったので、加速以外のの影響もありそうでした。

図4.黒四角の走行データ

どうでしょうか、スロットル開度がぴょこぴょこ動いていて、加減速の回数も赤い三角のデータよりも多い気がします。こういう走行の方が傾向としては燃費が悪そうです。見にくくて申し訳ないですが、6段のグラフの一番下の「燃料消費量」の縦軸が図2、3、4で違っているところも参考になると思います。

アクセル操作の多さと燃費の関係

 加減速が多い、ということはアクセルペダルを大きく踏んだり離したり、という走り方の割合が多いと言うことかな、と想像はできます。ということで、今度は、「アクセル開度」の値を見てみます。「アクセル開度」という名前のデータは残念ながら取れてなかったので、「Throttle position(スロットル開度)」を見ました。アクセルペダルを踏むと、エンジンのスロットルが開いて車が加速する、という風になっているはずですので、まあまあ、同じように動くのでは、と期待します。

\[ アクセル操作の多さ = \frac{\sum_{i} (スロットル開度_i*\Delta t_i)} { 走行距離 } \]

という指標を考えました。この指標を横軸に、燃費を縦軸にグラフを書いてみると、下図のようになりました。トヨタ ヴォクシー同様、アクセル操作が多くなると燃費が悪くなる傾向がありました。
図4.アクセル操作の多さと燃費

トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H.24年式)との比較

 では、トヨタ ヴォクシーの結果を重ねてみるとどうでしょうか?1回の走行距離や平均スピードでグラフ化したものは、トヨタ ヴィッツ(KSP130)とトヨタ ヴォクシー(ZRR70W)の燃費を比較で記事にしましたが、さすがに排気量996ccのヴィッツはヴォクシーより一日の走行距離が20km以上では燃費が良いですが、20kmより短い場合は差が少なくなる結果でした。

図5.日当たり走行距離と燃費の比較


次に、横軸にkm当たりの加減速の多さをとり、縦軸に燃費をとって、ヴィッツとヴォクシーの結果を重ねてみます。重なっている部分もありますが、全体的に燃費の良いヴィッツがヴォクシーを上回っているように見えます。最近はハイブリッド車のように減速エネルギーを回収できる仕組みもありますが、今回のクルマはどちらも普通のガソリン車のなので、車重が思いヴォクシーの方が加速に必要なエネルギーが多く、減速時のブレーキによる消費も大きいので必要なガソリンの量も多い、というような解釈もできるのかもしれません。
図6.加減速と燃費、ヴィッツとヴォクシーの比較


さらに、アクセル操作の多さを横軸に比較してみました。図6と同じような傾向ですね。補足ですが、横軸の数字が大きくなりすぎるので、1000で割り、単位を付けるならこうかな?という単位を付けてみました(冒頭のグラフと同じものです)。

図7.アクセル操作の多さと燃費、ヴィッツとヴォクシーの比較

ちなみに、同じアクセル操作でもクルマによって加減速が違う?という疑問が生じるので比較してみました。同じアクセル操作でも、ヴィッツの方が加減速が微妙に大きい側にプロットされているので、クルマとして同じアクセル開度でもヴィッツの方が加速するような設計になっているのかもしれませんが、思ったほど差がない結果でした。

図8.アクセル操作の多さと加減速の多さ


以上より、ヴィッツの燃費はヴォクシーより全般的に良さそうですが、ヴォクシー同様、走行距離、アクセル操作によって同じように変化する、と言えそうです。