車を所有するときに気になることの一つに燃費があると思います。急加速/急減速は燃費に悪い、ふんわりアクセルエコドライブがいい、とか。実際どの程度影響があるのか、トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)の普段使いでの走行データを統計的分析手法の主成分分析で選定した条件(変数)を使って重回帰分析してみました。が、結果的に選択した条件によるガソリン消費量の変化に加えて、$y切片$つまり走行距離ゼロでも消費してしまうガソリン消費量が短距離走行の燃費悪化に影響ありそうです。以下詳細です。

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scikit-learnを使った重回帰分析

 「トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)の燃費を主成分分析してみる」では、走行に必要なエネルギーを代表する条件と、温度を代表する条件が寄与度が大きい結果でした。そこで、走行に必要なエネルギー系として、「走行距離」、温度を代表する条件として「外気温(最大)」を選定します。

 「scikit-learnを使った重回帰分析」を参考に、ガソリン消費量を目的変数にして  LinearRegression を使ってみました。編回帰係数が約 0.053、-0.003、切片が 約0.141、決定係数が約0.978でした。 走行距離の感度がkm当たり約0.053[L]ということで、1L当たりの走行距離を計算すると約18.9km/Lになります。また、外気温(最大)の方の感度が -0.003 ということは、外気温が1℃上がるとガソリン消費量が 0.003L減るということで、低温から暑い季節まで見るとどちらかというと温度が上がったほうがガソリン消費量が減る傾向がある、という結果です。夏のエアコンより、冬の暖房の方が感度が高いんですね。ちょっと意外です。

 2変数のうち、走行距離を横軸に、今回得られた結果をもとのデータと比較してみます。よく見るとオレンジの線が直線ではなく、ちょっと上下に振れています。この振れが外気温による影響と思います。思ったより小さい印象です。

図1.重回帰分析結果

 この結果でその時の走行距離を割って燃費を出し、元のデータと比較してみます。走行距離20km以下の燃費の悪い場合での幅を持っているところが外気温の影響のようです。燃費が一定でない部分で多少実際の燃費を説明しているで、考慮しないよりはいいのかもしれませんが、思ったより実際の燃費とのずれがあります。

図2.燃費計算結果


ということで、走行距離だけを変数にした時と比較し、外気温を考慮した場合のメリットを調べてみます。

図3.単回帰分析結果

回帰係数はほとんど同じでy切片が若干小さくなりました。決定係数はもう少し桁数を多く比較すると、重回帰分析時約0.977574だったのが今回は約0.977261だったのでわずかに下がっています。同様に、燃費がどうなるか計算した結果が図4の緑の曲線になります。図2にあった幅を持った部分がなくなって曲線になっているので、やはり外気温を考慮しないとより実際からのずれが大きくなりますね。※走行距離50km以下に拡大してグラフ化しています。

図4.燃費計算結果(重回帰分析と単回帰分析の差)

あれ?、図2にあった幅を持った部分がなくなって曲線になるのは分かりますが、走行距離に対して一定の割合でガソリンを消費するなら、その割合である「燃費」は一定になるのでは?と思って先程のガソリン消費量の回帰式をよく見ると、切片がありますね。

 図5のオレンジの線は切片ありで単回帰分析をした結果、その回帰係数を使って走行距離0でガソリン消費量0の点を通る様に計算した直線が緑の点線になります。絶対値としてはそんなに大きくないのですが...

図5.単回帰分析結果と切片

切片ありと、なしの回帰式から燃費を計算してみると...

図6.切片有無と燃費

緑の点線が切片なしで計算した場合で、燃費は一定です。走行距離10km以下で実際の燃費も悪くなっていますが、その要因の一つとして、走行距離ゼロでもガソリン消費量がゼロの点を通らない、オフセット分が影響していそうな結果ですね!

 つまり、走行距離が少ない場合は、クルマを使う時の初期投資的な基本料金的なガソリン消費の割合が高くなってしまうので燃費が悪くなってしまうようです。


参考文献

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