OBD2アダプターを使って車の故障診断コネクターからデータを取ることが出来るスマホアプリで普段使いでの燃費を計測しています。今回、トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)のデータを取ることが出来ましたので、以前データを取得していたハイブリッド車ではない旧型トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H24年製)の燃費と比較したところ、特に短距離、低速走行での燃費が良くなっている結果でした(1)。 一方で、アクセル操作によっても燃費が良くなったり悪くなったりする(2)、という結果もあったので、ノア ハイブリッドではどうか、調べてみました。すると、ノア ハイブリッドの燃費は、アクセル操作の影響(アクセル操作の荒さ)は受けるが、ヴォクシーよりは影響が少ないようです。以下、詳細です。

車両情報


加減速の多さと燃費の関係

 前回(2)同様、走行中の約1秒ごとの時系列のスピード、燃料消費量、スロットル開度と、スピードから計算した走行距離、走行時間等で計算しています。時系列のスピードの情報から、まずは加速度を算出し、加減速の多い走行が燃費に悪いのか、調べてみます。時系列データの$i$番目の時点での加速度を$a_i$、スピードを$v_i$、時刻を$T_i$とすると、簡単に後方差分を取って以下のように計算します。

\begin{equation} a_i = \frac{v_i - v_{i-1}}{T_i  - T_{i-1}}  \end{equation}

次に、加減速の多い少ないを何か表現するのに、単純に加速度の平均では上手くいかなかったので、加速度を2乗して平均化してみました。正負ある値のばらつき具合を考慮するには、絶対値を積算するより、2乗する(3)そうなので、それにならいました。ということで、

\[ 加減速の多さ = \sum_{i} \sqrt{(a_i \cdot \Delta t_i)^2}  \]

というような指標を考え、走行開始から終了まで積算し、さらに走行距離で割ってkm当たりの値を計算します。加減速が多いと大きくなり、滑らかに運転すると小さくなると思います。

横軸に走行ごと(1回の走行開始から終了まで)の平均スピードを、縦軸にこの"加減速の多さ"、をとって、前回のヴォクシーのデータと比較してみました。1つの点が1回の走行、ノア ハイブリッドが1118回の走行結果、ヴォクシーは1639回の走行結果です。同じドライバーが同じような使い方をしているので、ほぼ、一致していますね。

平均スピードと加減速の多さ


では、燃費には差があるか確認します。横軸に"加減速の多さ"、縦軸に走行ごとの燃費をとってグラフを書くと、全体的には加減速が多くなると燃費が下がっていますが、なんとなく加減速が少ないところで、あまり加減速の影響を受けない領域があるように見えます。

加減速の多さと燃費

さらに、ヴォクシーの時のデータと重ねてみます。比較してみると、ヴォクシーの時は加減速が多くなると燃費が下がる傾向が強い(オレンジの分布の燃費方向の幅が小さい)のに対し、ノア ハイブリッドは点の分布が広がっていて、様子が違うようです。加速に必要なエネルギーをハイブリッドの仕組みで減速時に回生することで加減速の影響を受けにくくしている...?次に機会があれば調査してみたいと思います!


加減速の多さと燃費(ヴォクシーと比較)


アクセル操作の多さ(荒さ)と燃費の関係

 加減速が多い、ということはアクセルペダルを大きく踏んだり離したりの粗い運転ということかな、ということで、ここでも前回(2)同様、「アクセル開度」の値を見てみます。前回同様、「Throttle position スロットル開度」って「アクセル開度」?と思って、「Throttle position スロットル開度」を見ました。 スロットル開度× $\Delta t $を積算し、走行ごとに積算値を走行距離で割って

\[ アクセル操作の多さ = \frac{\sum_{i} (スロットル開度_i*\Delta t_i)} { 走行距離 } \]

という指標を計算してみます。この指標と燃費の関係で散布図を描いて、ヴォクシーと比較します(冒頭のグラフと同じです)。結果、ヴォクシーの時はアクセル操作が多くなると15km/L程度から5km/L以下に割と単調に下がりますが、加減速の時と同様、ノア ハイブリッドはある程度までは燃費があまり下がらないように見えます。全体的にはノア ハイブリッドもアクセル操作の多さに応じて燃費も下がっていますので、まったくアクセル操作の影響を受けず良い燃費で走れます、とは言えませんが、加速の多さで見たグラフ同様、傾向が違いますね。

アクセル操作の多さと燃費(ヴォクシーと比較)

まとめ

 トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W、R5年製)ヴォクシー(ZRR70W、H24年)の燃費と比較し、加減速による燃費悪化に違いがあるか調査しました。その結果、ノア ハイブリッドの燃費は、アクセル操作の影響は受けるが、ヴォクシーよりは影響が少ないようです。

関連記事

(1)トヨタ ノア ハイブリッド(ZWR90W)と旧型ヴォクシー ガソリン車(ZRR70W)燃費比較(1)走行距離、平均スピードの観点で比較
(2)トヨタ ヴォクシー(ZRR70W、H.24年式)の燃費はアクセル操作の多さによっても変わる

参考文献